フルボキサミン(商品名:ルボックス/デプロメール)についてcolumn

Update:2022.09.30

フルボキサミン(商品名:ルボックス/デプロメール)について

目次

フルボキサミン(商品名:ルボックス/デプロメール)とは

 フルボキサミンはSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)に分類される抗うつ薬で「ルボックス」や「デプロメール」という商品名で販売されています。ジェネリック医薬品も多く販売されており、その場合は商品名に「フルボキサミン」がつきます(以降、フルボキサミンにて統一します)。

フルボキサミンは1970年代にオランダで開発され、その後1983年にスイスやフランス、ドイツなどヨーロッパを中心に販売が開始されました。日本においては1999年に販売されています。フルボキサミンが販売されるまでは三環系抗うつ薬や四環系抗うつ薬といったお薬が主流でした。これらは強力な抗うつ作用を有する一方で眠気や口の渇き、便秘といった多くの副作用も有し、使いにくいお薬でした。しかしフルボキサミンなどのSSRIではこれらの副作用の頻度はとても少なく、うつに対する作用は三環系や四環系抗うつ薬とほぼ同程度とされ、SSRIは患者さんにとっても使いやすく、継続しやすいお薬です。この副作用の頻度の違いは脳内で作用する神経系の違いによります。脳内には非常に多くの神経が存在しています。現在まだうつ病の発症メカニズムに不明な点は多いですが、主にはセロトニン神経系やノルアドレナリン神経系が関与していることが分かってきました。SSRIはこの内、セロトニン神経系に選択的に作用することで抗うつ作用を呈します。一方で三環系/四環系抗うつ薬は、セロトニン神経系やノルアドレナリン神経系以外にも多くの神経系に働きかけてしまうため色々な作用が副作用として発現してしまいます。

 

フルボキサミンの作用について

 フルボキサミンは、脳内においてセロトニン神経系に作用するお薬です。セロトニンとは神経間での情報伝達を行う物質の1つで、多くの役割を担っています。神経の末端からセロトニンが放出されると受容体に結合することで体に変化が起こります。その後受容体に結合せずに使われなかったセロトニンは再び神経末端に回収されます。

うつ病の患者さんはこのセロトニン神経系の活動が鈍っていることから、セロトニンの放出量が通常よりも少ないと考えられています。フルボキサミンをはじめSSRIはセロトニンが神経末端に再度回収される部分にフタをする作用があるため、回収されずに結果的に神経間に存在するセロトニンの量が増えることになります(この事から「選択的セロトニン再取り込み阻害剤」と言われています)。この神経間にセロトニンが増える事により徐々に脳内に変化が生じ、うつ症状が改善されていきます。

フルボキサミンの効能効果は以下の通りです。

  • うつ病/うつ状態
  • 社会不安障害
  • 強迫性障害(小児)

フルボキサミンは一般的なうつ状態(気分が落ち込む、不安を感じる等)以外にも社会不安障害、強迫性障害に対しても効果があります。

  •  社会不安障害とは、他人(特に知らない人や上司等の偉い方と)と関わる場面や大勢から注目される場面において強い不安を生じ、仕事や学校生活といった社会生活を円滑に送れない病気の事です。
  •  強迫性障害とは、頭の中に生じた不安にとらわれてしまい、それを払拭するために同じ行動を繰り返してしまう病気です。例えば家の鍵を閉めたか不安になり何度も鍵を閉めたか確認したり、トイレに行ったあとに何度も手を洗ったりします。

 

フルボキサミンの服用方法について

 フルボキサミンの服用方法については以下の通りです。

成人に対する投与方法:

1日50mgから開始し、1日150mgまで増量していきます。これを1日2回に分割して服用します。

小児に対する投与方法:

 フルボキサミンは小児(15歳未満)において強迫性障害に対しても有効性が確認されています。小児に対する投与方法は1日1回25mgを就寝前に投与します。この投与方法を1週間以上継続した後に1日50mgを1日2回朝及び就寝前に投与するようにします。年齢や症状に応じて適宜増減しますが、増量は1つの投与方法を1週間以上は継続してお子さんの症状や状態を確認した上で、25mgずつ増量していきます。

 

フルボキサミンの注意点について

 フルボキサミンの開発期間中に認められた主な副作用は以下の通りです。

  • 悪心(嘔吐前のむかつき):8%
  • 傾眠(ねむけ):7%
  • 口渇(口の渇き):2%
  • 便秘:1%

既に書いた通りフルボキサミンは脳内でセロトニンの量を増やす作用があります。その結果、脳に変化が生じうつ症状が改善に向かいます。この「脳の変化」には最低2週間~3週間程度時間が必要となり、その間上記のような副作用が生じることがあります。また、上記以外にもフルボキサミンを飲み始めて不安感が強くなったりすることもありますが、それらは一時的な症状であることが多くしばらく飲み続けると徐々に副作用も軽減していきます。ただし、症状の強弱は患者さんによってさまざまであるため、一時的な症状だからといって無理に飲み続ける必要はなく、遠慮なく医師・薬剤師に相談するようにしてください。

服用できない/注意が必要な患者さん

以下の患者さんはフルボキサミンを服用することができません。

  • モノアミン酸化酵素阻害剤を投与中または投与中止後2週間以内の方
  • ラメルテオン(ロゼレム)、チザニジン(テルネリン)、ピモジド(オーラップ)を服用中の方

モノアミン酸化酵素阻害剤というお薬はフルボキサミンと一緒に服用することで効果や副作用が強く出てしまう可能性があるため併用できません。またラメルテオンなどフルボキサミンの分解を阻害してしまうお薬もあるため、現在服用しているお薬がある場合は医師・薬剤師に相談してください。

 また、妊娠中の方や授乳中の方は胎児や母乳中へフルボキサミンが移行することがわかっているため服用の必要性を確認するようにしてください。