セルトラリン(商品名:ジェイゾロフト)とはcolumn

Update:2023.03.06

セルトラリン(商品名:ジェイゾロフト)とは

目次

セルトラリン(商品名:ジェイゾロフト)とは

 セルトラリンは米国ファイザー社によって合成されたSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)に分類される抗うつ薬で「ジェイゾロフト」という商品名で販売されています。現在はジェネリック医薬品も多く販売されており、その場合、商品名に「セルトラリン」とつきます(以降、「セルトラリン」にて統一します)。

セルトラリンには普通錠とOD錠の剤形があります。OD錠とは、口腔内崩壊錠といい口の中で素早く崩壊し、水が無くても容易に服用ができるタイプのお薬の事です。普通錠、OD錠もお薬の効き目や作用時間に違いはなく、お薬の価格も全く同じです。

セルトラリンは1990年にイギリスで初めて販売が開始された後、日本では2006年から販売されています。当初、「うつ病」並びに「パニック障害」に対して適応を取得していましたが、2015年に「心的外傷後ストレス障害(PTSD)」の適応が追加されました。パニック障害とは、突然強い不安や恐怖を感じ、めまいや発汗、動悸といった症状(パニック発作)を発現する病気です。心的外傷後ストレス障害(外傷後ストレス障害)とは、過去に強烈な心的外傷(トラウマ)を経験し、それから時間が経過しても突然トラウマを思い出したり悪夢を見たりする病気です。セルトラリンはこのような病気に対しても有効性が認められています。

セルトラリンの作用について

 セルトラリンは、中枢神経系においてセロトニン神経に作用し、優れた抗うつ作用及び抗不安作用・抗パニック障害作用を発揮します。セロトニンとは神経伝達物質と言い、特定の神経の働きを調節する役割があります。うつ病の患者さんはセロトニン神経の働きが通常よりも落ちているため不安を感じやすいとされています。セルトラリンは脳内においてセロトニンの量を増やす作用があり、それにより徐々に脳内に変化が起こり結果的に症状が改善されていきます。

 セルトラリンを服用すると速やかにうつ症状が改善されるかというとそういう訳ではなく少なくとも1か月~3か月程度は継続して服用しなければいけません。お薬服用後、速やかに脳内のセロトニン量は増加しますが、うつ症状の改善に重要なのはそれだけではなく、弱ったセロトニン神経を通常の状態まで活性化させたり、新たな神経が新生されることが大切です。そのため症状の改善には根気よくお薬を継続することが必要です。

セルトラリンの服用方法について

 セルトラリンには以下のお薬が販売されています。

  • 25mg錠
  • 25mgOD錠
  • 50mg錠
  • 50mgOD錠
  • 100mg錠
  • 100mgOD錠

 

基本的な服用方法としては、初期用量として1日1回25㎎から開始します。その後、1日1回100㎎まで増量します。年齢、症状など状態を見ながら適宜増減しますが、1日100㎎を超えてはいけません。(普通錠、OD錠いずれも同様の服用方法です。)

セルトラリンの注意点について

 セルトラリンの承認時までにみられた主な副作用は以下の通りです(セルトラリンが投与された総症例1478例中881例に2075件の副作用が発現しました)。

  • 悪心(嘔吐前の胃のむかつき):2%
  • 傾眠(眠気):3%
  • 口渇:2%
  • 頭痛:8% 
  • 下痢:0% など

 

投与開始時に注意しなければならないことは、「賦活症候群(ふかつしょうこうぐん)」があります。賦活症候群はSSRIなどの抗うつ薬に見られる副作用の1つで初期刺激症状とも呼ばれています。症状としては気分の高まり・不安や焦り・不眠などが一般的ですが、悪化すると、稀にリストカットなどの自傷行為や自殺行為に至るケースもあります。これらはお薬の投与開始約2週間以内や、増量時に起こりやすいと言われているためその時期は特に注意が必要です。医師・薬剤師の指示通りに服薬し、定期的に医療機関へ通院するようにしましょう。

また、他のSSRIと同様に悪心や下痢といった「消化器症状」の発現頻度が高い傾向にあります。神経伝達物質であるセロトニンは不安などの感情以外にも消化管の調節作用も有しているため副作用として消化器症状が発現しやすいです。また、眠気も発現する可能性があるため、自動車などの危険を伴う機械の運転は避けるようにしてください。一般的にこれらの副作用は飲み初めに発現頻度が高く、徐々に収まっていくことが多いとされています。症状が重い場合は医師に相談して、症状を緩和するお薬を処方してもらうことも可能です。

 

服用できない/注意が必要な患者さん

以下の患者さんはセルトラリンを服用することができません。

  • モノアミン酸化酵素阻害剤(MAO阻害剤)を投与中または投与中止後2週間以内の方。

 

MAO阻害剤を一緒に服用するとセルトラリンの分解が阻害されてしまい、効果や副作用が強く出てしまう可能性があるため併用できません。その他にも頭痛薬や胃薬、ドラッグストアで購入できるお薬の中にも併用するには注意が必要なお薬があるため、今現在何かお薬を服用中の場合は医師または薬剤師に相談してください。

 また、妊娠中の方や授乳中の方は胎児や母乳中へセルトラリンが移行することがわかっているため服用の必要性を確認するようにしてください。