リスペリドン(リスパダール®)についてcolumn

Update:2023.03.07

リスペリドン(リスパダール®)について

目次

リスペリドン(商品名:リスパダール)とは

 リスペリドンは双極性障害(躁うつ病)や、幻覚や意欲低下などの症状が発現する統合失調症の治療に用いられるお薬で、「リスパダール」という商品名で販売されています。ジェネリック医薬品も多く販売されており、その場合は名前にリスペリドンとつきます。

 双極性障害は、躁うつ病とも呼ばれ、躁状態とうつ状態、そして躁・うつどちらでもない通常状態の3つの状態を一定の期間ごとに繰り返します。躁状態では、気分がとても高揚し、誰にでも話しかけたり全く寝ない、危険を顧みない行動をとるといった状態になります。一方うつ状態は気分のふさぎ込み、意欲の減退、強い不安感といった症状が発現します。双極性障害の治療では、躁・うつ・通常状態、これらの状態に合わせて適切なお薬を使用することになります。治療において大切なのは再発させないことであるため、通常状態であってもそれを維持するためのお薬(躁状態、うつ状態を再発させないお薬)を服用してもらう必要があります。双極性障害において最も多く使用されている治療薬はリチウム(商品名:リーマス)というお薬ですが、患者さんによってはリチウムの効果が乏しい場合もあり、その場合は他のお薬を使用します。リスペリドンを含め、双極性障害に優れた治療効果を有するお薬は複数認められているため、患者さんにとって安全で効果的なお薬を選択して使用します。

双極性障害を発症する詳しいメカニズムはまだ分かっておりませんが、遺伝的要素やストレスといったことにより脳内の情報伝達に異常を来たし発症すると言われています。双極性障害は、症状が一度落ち着いても再発してしまうケースが多いため、定期的に通院し、患者さんの状態について患者さん本人だけでなくご家族の協力も不可欠になります。

 

リスペリドンの作用について

 双極性障害では、躁状態とうつ状態、そのどちらでもない通常状態の3つの状態が症状として現れます。このうちリスペリドンは躁状態の改善効果を有するお薬です。

 脳内には数多くの神経が張り巡らされており、それらが綿密にコミュニケーションすることによって意欲や感情を適切に感じることができます。双極性障害ではそのバランスが崩れることによって躁状態やうつ状態が現れます。リスペリドンは脳内の興奮を抑えることにより、過剰な気分高揚状態を抑制させます。具体的には、躁状態では脳内でセロトニンやドパミンといった物質が過剰に働いていることが分かっており、リスペリドンはそれらの働きを特異的に抑えることができます。セロトニンやドパミンに作用することからセロトニン・ドパミン拮抗薬(SDA)と呼ばれ、SDAに分類されるお薬は他にもいくつかあります。SDAは一般的に統合失調症治療に用いられますが、作用の汎用性により双極性障害にも用いられています。

 

リスペリドンの服用方法について

リスペリドンは日本においては双極性障害の適応を有しておりませんが、その有効性は以前より知られており広く治療目的で使用されています。海外でも治療効果に関する研究は多く行われており※1、日本の双極性障害の治療ガイドライン※2においても推奨されているお薬です。

用法用量としては、基本的に成人は1回1mgを1日に2回服用し、患者さんの状態を考慮して徐々に増量します。維持量は通常1回1〜3mgを1日2回服用します。年齢・症状により適宜増減しますが、1日12mgを超えない範囲で調整します。なお、この用法用量は統合失調症治療においても同様の用法用量となります。

リスペリドンの注意点について

リスペリドンはセロトニン・ドパミン拮抗薬(SDA)に分類されるお薬で、SDAの代表的な副作用に手足の振るえ(錐体外路症状)や乳汁分泌・月経不順(高プロラクチン血症)といった症状がみられます。その他、過去に行われた調査において認められた主な副作用は以下の通りです。

  • アカシジア(じっとしていられない、そわそわする):4.95%
  • 不眠症:4.11%
  • 振戦(手足の振るえ):3.07%
  • 便秘:2.98%
  • 易刺激性(イライラして怒りやすくなる):2.98%
  • 傾眠(眠気):2.55%
  • 不安:2.38%

また、投与期間中、起立性低血圧や血糖異常が生じる可能性があります。それらは特に服用開始初期、再投与時、増量時に生じやすいため、患者さんの状態に注意して投与や増量を行う必要があります。それらの症状が発現した場合は減量などの対応が必要となります。

 

服用できない/注意が必要な患者さん

以下の患者さんはリスペリドンを服用することができません。

  •  アドレナリンを使用している人(アドレナリンをアナフィラキシーの救急治療に使用する場合を除く)
  •  過去にリスペリドンおよびパリペリドン(商品名:インヴェガ、ゼプリオン)で過敏症のあった人

 

リスペリドンを服用している間は眠気、めまいなどが現れることがあるため、自動車の運転など危険を伴う機械を操作する際には注意する必要があります。もし、これらの症状を自覚した場合には、すみやかに機械の操作を中断してください。その他にも、リスペリドンと一緒に併用すると効果が減弱したり、副作用が発現しやすくなるお薬があります。現在服用中のお薬がある場合は医師、薬剤師に相談するようにしてください。

※1 Yildiz,A.,Vieta,E.,Leucht,S.,et al.: Efficacy of Antimanic Treatments:Meta-analysis of Randomized,Controlled Trials.Neuropsychopharmacology,36; 379-389,2009

※2 日本うつ病学会治療ガイドライン Ⅰ.双極性障害 2020